Koshiji Yoko

越路姉妹の越路よう子が日々思うことを綴ります。

ココロ

能楽師の安田登さんの本を読んだ。

大変興味深い本で、この本では能のことを解説する

本ではなくココロの問題について深く考えさせられ

る、この時代を生きるための指南書的な本だった。

私にとってはここ最近最もヒットした本で、大変興

味深く読ませていただいた。

 

安田先生曰く

ココロには3層あるのだという。

表面の1層目は「ココロ」。

それは移りゆくもので、数日後には消えてしまうは

かないもの。去年と今年とで全然違うことを考えた

り言っていたりすることはままあるが

そんな感じのレベルを指す。

 

中層部は「思い」になる。

これは「こい(恋)」とも言い、「こい(乞い)」

とも言う。雨乞いは雨を求め、物乞いはものを求め

、恋は好きな人の気持ちを求める。

つまり、簡単に消えてしまう「ココロ」よりもはる

かに強い「思い」だ。

時にそれは激しい。

 

そして深層部には「心(しん)」があるのだそうだ。

これは芯とも言う。

思いよりずっと深い「覚悟」のような思いがある

「芯」だ。静かに腹の底で思う強い覚悟だ。

 

このようにココロには3層のレベルがある。

そんなことが書かれていた。

 

 

言葉には魂が宿ると言う。

言い換えれば、言葉には心が宿る。

いわゆる言霊だ。

 

これはホントにあるんだと思う。

ただ、その言葉にどのレベルの心が宿っているか

は別の問題だ。

 

 

例えば

コンビニなどで、「いらっしゃいませぇ〜」

「またお越しくださいませぇ〜」などと、どんな

店に入っても必ず言われるが、心を感じることは

ほぼない。

これを言わなきゃ店長に怒られちゃうので、仕方

なく言っているだけなのだろう。

そもそも心を込めるなんてトレーニングはないか

ら、とりあえずマニュアル通り言っているだけで

そのマニュアルの文言が音声になっているだけな

のだろう。

 

その証拠に、「いらっしゃいませぇ〜」「またお

越しくださいませぇ〜」に対し返事をしている人

など見たことがない。

つまり、コンビニなどで見ることのできるこのや

りとりには安田先生の言うところの、表層部の

「ココロ」すらなく音声でしかないのだ。

 

もはや言霊なんてそこには無い。

 

 

こうしたことは日常の暮らしの中でも多々ある。

ここに現代社会のココロの闇につながるものがあ

るような気がしてならない。

 

かく言う私も昔、ガソリンスタンドでバイトをし

ていた時「いらっしゃいませ〜!」がやがて

「せぇぇ〜!」になり「ありがとうございました

〜!」が「たぁぁ〜」になり、

「せぇ〜!」と「たぁ〜!」を元気よく発してい

た。ココロどころか言葉にすらなっていなかった

のだから、まるで人のことは言えない。

 

ただ、この時代、ココロの問題で苛まれている人

があまりにも多い。辛そうで見ていられない。

 

私はココロの時代に強く思う。

不安や、悩みに苛まれている人に伝えたい。

そして私は自分いつも言い聞かせている。

 

今の世の中不安ばっかり煽っているけど

よーく考えたらほとんどのことは大丈夫なんだと。

将来のことなど考えなくて良いんだと。

過去のことなど忘れちゃえば良いんだと。

まわりの期待なんかに答えなくて良いんだと。

保険なんかに入らなくて良いんだと。

嫌なことは辞めちゃえば良いんだと。

もっと楽になっちゃえと。

フルチンになっちゃえと。

今を燃えようと。

大丈夫だと。

 

 

 

それはココロの中に「芯」を求めれば一番効く。

 

ココロというものは触れ合えば動く。

タッチすると揺れる。

交わると振動する。

 

それは簡単なこと。

気持ちをのっければいいのだ。

 

「いらっしゃませぇ〜」に気持ちをのっければい

いのだ。

 

 

そして恋すれば、乞えば激しく動悸する。

祈りに通じる。

ワクワクする。

ドキドキする。

やりきれなくなる。

全身の細胞が騒ぐ。

 

芯になればココロは重心を持ち安定する。

肝が据わる。

心が落ち着く。

 

 

 

私は越路よう子として、取り憑かれたように

「恋をしろ」「恋をしな」「恋が一番」などと

歌い続けてきたが、これホントに大事だと思うの

です。

 

マレーネデートリッヒは「私は全ての物や事柄に

恋をするわ★あのお皿にだってね」なんてことを

名言として残している。

恋とはそういうものなんだ。

乞う思いは、ココロを凌ぐ中層部、

それはそれがやがて芯へ向かう。

 

ガソリンスタンドでのバイト時代を猛省し

心を込めて「ありがとう」を言おう。

相手の目を見て「ありがとう」を言おう。

「ごめんなさい」を言おう。

「こんにちは」を言おう。

「さようなら」を言おう。

もう「せぇ〜」とか「たぁ〜」とか言うのはやめ

よう。

 

そんなことを思った冬の始まり。

 

 

越路姉妹の新曲ができた。

タイトルは以下の通り。

「レレレのレ」

「思い出はシャボン玉」

「別れ話でしょ」

 

心を込めて歌いたい★