Koshiji Yoko

越路姉妹の越路よう子が日々思うことを綴ります。

越路3姉妹東北の旅・編集後記

越路3姉妹東北の旅・編集後記

 

5月の徳島公演に続き、6月は東北ツアーから始まった。

 

山形、福島、仙台と3箇所での演奏旅行だった。

どの公演もそれぞれ制作者と出演者の「絆」のようなものを感じる楽しい旅だった。

 

徳島の拝宮公演からも多くのことを教えていただいたが、

今回の旅も同じように多くのことを教えていただいた。

 

 

冒頭に書いた「絆」について。

 

 

 

音楽の歴史には、とてつもなく長い歴史がある。

神話の世界に出てくるアメノウズメまで遡るともう

何年前の話なのか正確にはわからない。

 

ただ、音楽の役割ははっきりしていた。

 

音楽とはそもそも、祈りや願いを天に届けることが役割だった。

それが長い時を経て、いつしかショーのようなものになりお金の関係ができてくる。

 

最初はそのお金もお賽銭のような感覚だった。

祝い芸などで、芸人にお祓いをしてもらう代わりに支払うお金だ。

河原乞食などと呼ばれ、芸人は差別も同時に受ける。

これが歌舞伎の始まりであり、別の問題に膨らんでいった差別の始まりでもあった。

 

さらに時が経つと芸人(音楽家を含む)は投げ銭やおひねりではなく、

約束されたギャラ(出演料)を手に入れるようになる。

 

そしてさらに時が経過すると、ショー以外の商品が生まれる。

その世界を再生するレコードや、カセットテープなどだ。

それが大きなお金に換わることがわかると、人々は音楽だけでなく

様々なグッズを作るようになる。

これがレコード会社の始まり。

 

また、そのショーは興行などと呼ばれヤクザ世界の人々がうなるようなお金を

元に仕切り始める。これがプロモーターの始まりだ。

 

新聞やテレビやラジオといったものが出て来た時には、音楽の持つ影響力は

計り知れないほどの大きなものになった。

その力は国境さえも越えていった。

 

やがて音楽はその商品を売るために発信される「効果」としての役割も

担うようになる。 CM音楽などはそれだけのために出来たジャンルだ。

 

こうして芸能や音楽は時代によって役割を変えてゆく。

 

今の時代はさらに加速し、デジタルツールがメディアの役割も兼ね備え

全てがその世界で完結するようになる。

音楽を聴く機会も、発信する機会も、決済する機会も、、、、、

 

それはそれで良いところもいっぱいある。

今まで届くことのなかったところまで様々なものが届くのだから。

 

 

ただわたしはちょっと立ち止まって考えたい。

 

 

本当にこれでいいのか?

 

音楽のそもそもの始まりと、今の音楽の役割に開きがありすぎるんじゃないかと。

 

 

音楽は人々の苦しみや悲しみに寄り添ったり、人々が抱える日頃の苦しみを解放する

爆発力だったり、天につながるある種の感覚を共有することだったり、祈りだったり

願いだったりするのが大切な役割だった。

 

こうした大切な役割を動機としていなければ音楽や音楽家は、ただの商品になってしまう。その音楽に集まる人々はその商品に集まる単なる商人になってしまう。

天につながる発想とはかけ離れ、お金に群がる人と商品という図式になってしまう。

そんな音楽や人なんて、本当に人々のために役に立っているのかな?

と思うのだ。

 

今の音楽の広がり方は希望を持てる側面はいっぱいあるし、これから先も

チャンスや可能性は広がってゆくことを前提に。

 

矛盾することだらけかもしれないが、わたしは何だか音楽業界そのものの体質が

気持ち悪い。(そうでは無い人もたくさん知っている)

向かっている方向や軸みたいなものが、人の気持ちやシックスセンス

かけ離れているような気がした時に気持ち悪くなるのだ。

 

わたしのような、それこそ河原乞食のような者が偉そうなことは何も言えないが

少なくとも先日の徳島公演と東北ツアーで出会った人々や音楽家の方々は

音楽の役割を魂のレベルから持っている人々ばかりだった。

そしてそれぞれのイベント制作者、裏方に回った人々と出演者が「友情」や

「絆」のようなものでつながっていた。

 

そして何より、そこに集まってくれたお客さんに寄り添うことができていた。

お客さんと制作者と出演者と天が手を繋いでいる感覚まで手応えを感じた公演だった。

 

わたしはこうしたことを続けてゆきたい。

音楽とはそうあってほしいと願う。(少なくともわたしの中では)

たとえ小さなことであっても、こうした感性の音楽家と残りの人生共に音を出して

ゆきたい。

 

この東北ツアーは、腹筋が筋肉痛になる程毎晩笑い続け、時には涙を流し、踊り、歌う

全てのエネルギーが明るくポジティヴな時間に包まれていた。

 

関わってくれた全ての方々に、葉山館の皆さん、山形ワインバルスタッフの方々、

かみのやま観光協会のみんな、音茶屋のみんな、福島飯坂温泉の方々、旅館青葉の皆さん、仙台ラブミー牧場の皆さん、白崎映美と白ばらボーイズの皆さん、越路和子バンドのみんな、司会のまいちゃん、晴豆のかな、越路和子、越路ファラオ、全てのお客さんに心から感謝を込めて。

 

わたしは多くのことを教えていただきました。

 

音楽は尊いものだと。

 

誠にありがとうございました。

 

 

 

 

この世界の全ての音楽家へ愛を込めて。      越路よう子