朝の喫茶店での出来事。
二人の初老のおじさんが二人でお茶を
している。一人は雄弁で、ずっと話を
している。
「そんなことじゃぁダメだって言って
やったんだよ。」
「けじめっていうのはね、付けないと。
ビシッとした筋が通っていなきゃダメ
なんだよ。」
「俺はすぐに連絡したよそりゃ、すぐ
だよ。」「それやんなきゃ先に進まな
いよ!」
こんな調子で、ずーっと話している。
もう一人のおじさんは、
「うん」「うん」「うん」とほとんどが
「うん」。
たまに「ほー」「ほー」「ほー」と挟む
とまた「うん」「うん」「うん」。
さっきから1時間くらい経つが、もう一
人のおじさんは「うん」と「ほー」しか
言わない。
しばらくすると、話の内容が変わって来た。
しゃべり続けるおじさんはしゃべり疲れた
のかちょっと間をあけると
「いやぁ、俺もスケベだからさぁ、この前
女子バレーボールの試合を見た時さぁ」
うなずきおじさんはここでもうなずいていた。
「うん、うん」
「どうしてもスケベな目で見ちゃうんだよなぁ」
「うん、うん」
「あのキラッと光った汗がさぁ」
「ほーほー」
「首筋につーっと流れ落ちたのがさぁ」
「ほーほーほー」
「アップで映るとそれがさぁ」
「ほーほーほーほー」
「火照った肌にさぁ、、、、、、、、」
「ほーほーほーほーほーほーほーっ!」
次第にうなずきおじさんは「ほー」しか
言わなくなった。その上、声の大きさは
クレッシェンドしていって力強くなって
ゆく。
その「ほぉぉぉぉーっ!」がピークに達
した時におしゃべりおじさんは「まぁ、
それはいいとしてやっぱり物事には筋道
が大切だよな」と、文脈を完全に無視し
た内容に急ハンドルを切った。
すると、うなずきおじさんは「ほぉーっ」
っとため息みたいな声で小さくうなずいた。
ここは「うん」なんじゃないのかな?
と余計なことを考えたが、おしゃべりお
じさんとうなずきおじさんの会話はその
後もずっと続いていった。
私には、うなずきおじさんの「ほー」と
「うん」に込められた気持ちの抑揚の方
が何故か伝わった。
こんなこともあるんだなっ。
おっと!
全然仕事してなかったぜっ。
がんばろっと。
世界は美しい、、、