Koshiji Yoko

越路姉妹の越路よう子が日々思うことを綴ります。

出羽三山修行の巻 1/2

浪曲師の玉川奈々福さんにお声をかけていただ

いて、山伏の修行に参加させていただいた。

 

出羽三山という山々をご存知だろうか?

東北は山形県庄内地方に鎮座する月山、

羽黒山湯殿山の三つの霊山を出羽三山と呼ぶ。

 

私が出羽三山に出会ったのは、もう15年くら

い前に遡る。

庄内にある「亀や」という古い旅館の方とのご

縁がきっかけだった。

初めて庄内という名を知ったのも、出羽三山

存在を知ったのも、その旅館の方に案内しても

らったことがきっかけだった。

 

私はその時、月山、羽黒山湯殿山という霊山

をダイジェストでぐるっと周り、即身仏の存在

や山伏の存在を知ることになる。当時の私は黒

川能の存在や松尾芭蕉がこの地を目指したこと、

月読命の話し、土門拳写真美術館の存在や、日

本海に沈む日本一美しいと言われる夕陽、酒田

ラーメン、極上に美味いイタリアンレストラン

のアルケッチャーノの存在など知らないことだ

らけで目をキョロキョロさせながら、その魅力

的な話にすっかり魅了されていったのだった。

その上、庄内の空港名が「庄内おいしい空港」

という名の通り、何もかもが美味で地元海産物

から肉、野菜、米、酒、口にするもの全てが美

味であり、ひたすら感動したものだった。

 

その後しばらくして私は上々颱風の白崎映美さ

んに出会う。

 

庄内は酒田市出身の映美さんとはすっかり意気

投合し、今では毎年酒田にある白ばらというグ

ランドキャバレーで演奏をご一緒したり、つい

には映美さんの率いる白ばらボーイズというバ

ンドのレコーディングをプロデュースさせてい

ただくまでの関係となった。

私の庄内愛がもたらしてくれた幸運の一つだった。

 

数年前から私は毎年どころか、毎月山形に通う

ような暮らしになっていた。

毎月というところが我ながらすごいなと思うのだ

が、それは意図的にではなく結果的に毎月行くこ

とになってしまうのだからきっと呼ばれていると

いうか、ご縁が深いというか、前世あたりで何か

あったのかもしれないなんて事まで考えてしまう。

まぁいずれにしてもそれは私にとって、とても楽

しくも嬉しいことだった。

 

そんな土壌の上で玉川奈々福さんから出羽三山

の山伏修行に誘われたのである。

 

 

奈々福さんは横浜出身の、日本を代表する人気浪

曲師で今年のはじめにとあることがきっかけで出

会うことができた。それは、私が制作(アートディ

レクションとサウンドプロデュースは久保田麻琴

さん)した「阿波の遊行」というCD音源のポスタ

ーがきっかけだった。

 

奈々福さんは大変な勉強家で、芸能の歴史やルーツ

についてとてもお詳しい上、今も尚精力的にフィー

ルドワークとも言える芸能探求の活動をされている。

彼女は優秀で個性的な人気浪曲師と言うだけではな

く、そもそもの浪曲の始まりとは一体なんだったの

か?その前にあった芸能とは一体なんだったのか?

それはどんな歴史の流れの中で変遷し、熟成して今

にたどり着いたのか?

そんなことを、精力的な行動力と旺盛な知的好奇心

とでまるで民俗学者のようにその謎を紐解き、咀嚼

し、生業としている浪曲そのものに反映させている

ように思える。

 

それはまるで、黒人ミュージシャンがルーツミュー

ジックをアフリカへ求め、その根源にあるサウンド

を探しに行く旅や、久保田麻琴さんが取り組んでい

阿波踊りの「ぞめき」シリーズや宮古島の神歌を

収録したスケッチオブミャークなどで日本のルーツ

ミュージックを発掘してゆく尊い作業にも精通する

ものがある。

 

 

そう、奈々福さんは単なる浪曲師ではないのだ。

フツーの浪曲師ではない。

ネオ浪曲師とでも言うべき存在なのかもしれない。

それは、トラッドやルーツを背骨として進化して

ゆく新時代のボイスパフォーマーとも言える。

 

きっと奈々福さんに合うサウンドやビートと、奈

々福さんのボイスをリミックスした音源を作った

ら、新しい世界が切り開かれるのかもしれない。

令和における三波春夫さんのような、ブッ飛んだ

音源ができるに違いない。

 

 

 

つづく

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月山 山伏修行